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   スパークした  最果タヒ
    

 白い革命ですね!
 あなたはそう思ったに違いない。白のなか花は生きるだろうか、生きるとしてそれはやはり白い花弁を持つのだろうか。黄緑の茎が栄え、奥ゆかしい花房が静かにたたずんでいることを想像した。左手の指先に電話があたり冷たさを思い出したあなたの頬は熱く赤い。頬のそばでは両眼のまつげが髪より黒く闇を放っていた。
 万端が雪化粧だった。歩くとさくりと雪の固まりが固まりと固まりに裂ける音がして、つまりそれは固まりと固まりの境界に当たる若干が、砕け潰れる音でもあった。冬であった。そうしてあなたはコートを着ている。赤や青の、数えても仕方がない、棚に並んだ背表紙たちの色数をついさっきまで数えては部屋で縮まりこんでいたけれど、突然、唯一のコートをひっかけて外へ飛び出していった。理由はわからないし、ないのかもしれない。

 一人で、あなたは歩いていた。「春、春は近いだろうか」小鼻を膨らませ思い描いてはみても、あなたのそれは薄桃色の花で、花の名すら虚像に追いついてはこない。足下では実像なる季節変わりの顛末として、濡れた雪が凍てつきながらも地を這っている。ころぶかもしれない、気をつけてと言う人もおらず、あなたは陽気なものだ、歩いて、わざと凍った白く未だ汚れようともしない雪の舗装を、選んでは踏みつけていた。
《気をつけて、ころぶよ!》
 それであなたは危険なことをやめる。

 やめた。艶のないアスファルトは、道端を除けば車や人によって積雪の中から顔を出していた。あなたもそこを歩いている。

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小説「スパークした」(作:最果タヒ)冒頭部分

初出:群像2009年5月号

年刊日本SF傑作選「量子回廊」収録

      魔法少女WEB  最果タヒ

   

 1. World Wide Web Witch


 魔法少女の攻略本(税抜価格・419 円)によると、フィクション・ノンフィクション問わず、魔法少女はロマンチックなものから力を借りて変身をするらしい。たとえば月や星、空や海といったそんなものによって、魔法という不思議現象は発生しているんだよ☆ なーんてことがそこには書かれていて、だからインターネットの力で魔法少女が変身できるのもナットクだね☆ と説明文は続いていた。
 まったくその通りだよ!  ネットは世界中で使われていて、今じゃ利用者数は世界人口のおよそ98%を占めている。つまり空のように世界を包み、海のように人々を結び、星のように瞬いているとも言えるっちゃ言えて、ネットはロマンチックなんだ。だから、ネットの力を借りて変身するような魔法少女が(そしてそれをやっているのがこの私☆)この世にいたってちっともおかしくなんてない。私は変でも個性的でも、不思議ちゃんでもなくって、ただちょっと他より強くて頼れるだけのどこにでもいる普通の女子高生なんだよ。(本名は織田です。)

 だから遅刻したんだ、今朝。

 どこにでもいる高校生だもんね、遅刻ぐらいするよ、そして怒られるよ。魔法のホウキで空を飛んだり、時間を止めたりなんてしないよ。だってできないもの。しぶしぶ歩くしかなくて、だから遅刻したわけで、現在怒られているわけ。
「せめて走って来なさいよっ」
「そういえばそうだねー」
「そうだねー、じゃないわよっ」

   

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別冊少年マガジン2012年2月号掲載(上記は冒頭部分のみ)

連載小説「魔法少女WEB」(作:最果タヒ、絵:紗和さん)は、別冊少年マガジンにて月刊連載中。

     移住者  最果タヒ

   

だれも来ない街だから、だれもでていっちゃだめなんだよ、

この世でもっとも好きなのは、きみのいない世界、すべてからきみだけが抜けて、なくなった世界で、よかったね、きみは銀河系から出られた、ということにして、きみだけをのけ者にした世界、あるんだよ、知らないの、そこに生まれなくて良かったね

かわいいなあって言っていたんだけど部屋にかわいいものなんてひとつもなかった 森に住もうよ、カラスなんて呼ばないから、伝書鳩だってあやつるから、バラを育てるのがじょうずなお嬢さんを、隣人にしよう もう ビルを振ったってなにも出てきやしないよしりとりがくだらなくて
くだらなくて
遊ぶことがなくなって
眠っていた時間を計上して
死んでいるのとかわらない! と、叫んだ
あいつ
ばかじゃないのか

世の中はそれを狂気と呼びます、けれど私は青春と名付けてやりたいのです、「ボランティアじゃないよ」、西の世界はすべてもえているとき、焦げてはがれた青空の奥から現れたまっくろ、星と月は私が食べました、救いようのない黒に、きみたちは眠ることを選択して、ほら、
それが間違いだった

恥ずべき姿で幸せだから手を叩いている姿を鏡にうつして、
だれかが、今日もなんにもなかったと言う
地表が全部つながっているってうそだ
戦争なんて目に見えないし
投身自殺も知らぬ間に起きる
知らぬ間

赤い糸で人がつながっているんだと信じていた頃、
絡まるのがいやで空に浮いていたかった

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「移住者」 作:最果タヒ