"きみにとって大切な本がだれかに燃料にされる夜
光が空にのぼっていって、夜の闇に飲まれる時間
おめでとう きみは幸福かどうかなんかより
考えなくちゃいけないことがたくさんある 眠気や食欲、性欲について
ぼくらに、知性などない
ただの獣でしかない夜は、ひどいさみしさが落ちてくる
  
「図書館の詩」最果タヒ
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私のどこかが幼稚になってそいつがスカートを履かせている
若さには何もないと老人になって思うのなら
「早死にしたい」
冷え性は死体になったみたいでちょうどいいよ
少しずつ死にかけて、命にしがみつく大人たちはそれをバカだと噂する

(「ミニスカートの詩」最果タヒ)

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"老いが雨になって落ちてきて
遠くに飛んでいく風船みたいに私の唇の赤は消えた
嘘をついてもいいんだよと通りすがりの風が教えてくれたのは
そのあとで
だから信じることが出来ない
嘘がいらないうちは だれもそうは言わなかったくせに
  
(「リップの詩」最果タヒ)
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"大切なものが死んだ後の大地は少し甘い匂いがする
ベランダにあったはずの蝉の死骸がなくなっていて
生き返ったのかなとご飯食べながら平然と思う
精神の健康なんてどこにもないよって知っているのは私だけ
悲しいことを泣き叫ぶ以外の方法をもっている生き物に生まれたかった
  
「線香の詩」最果タヒ
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"孤独なときほど、肺の音がよくきこえる 
別の生き物みたいに内蔵が体の中でうごきまわる気がする 
雨が降ると、呼吸音が頭上で雨を殺す音にしかきこえなくて 
孤独が凶器のように他者をなぎたおせるような予感がした 
嘘なのに 
   
(「ビニール傘の詩」最果タヒ)
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切り抜いて貼り替えられるようになった表情が
私の顔にトイレのタイルみたいに乗っている
人を殺せる気がすると言っている女の子はかわいくて
たぶん大往生で死ぬ
孤独とか幸福とかの次元でない所で私たちが生きてるとしたら
そこにいるだけのために 駒として生まれたのだとしたら


(「プリクラの詩」最果タヒ)
   

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"好きをかきあつめて冷やしたら、チョコレートになると思っていた
私の涙は真珠だと、絵本で教えてもらったのに嘘だった
比喩だけがきれいな世界でわたしは
女の子という言葉に守られて、化け物みたいにただれていく

(「生理ナプキンの詩」最果タヒ)
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"現実から逃げ出すためだけに、物語を綴るほど愚かではありません。
赤い色をぬりたくって夕日を作ったとしても、あの日見た空の事は忘れませんし上書きしません。
ここにはない場所を作る事に意味があるなら、それはぼくのためにあるのではなく、
だれのためになんのためにと問われれば、どれでもなく、
無意味でした。
ぼくが死ねば物語だけが残り、そしてそれがゴミ箱に捨てられてゆく事を幸福だと思う。
20年前、そんなふうに生まれたのです。
  
(「サクラクレパスの詩」最果タヒ)
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"しにたいような消えたいような水族館に行きたいだけのような心地で、街をあるく時間。クリスマス、イルミネーション。私に関係ない世界ほど、きらびやかで明るい時代。いるはずなのに、いない気がする。歩いているのに、いない気がする。しにたいような消えたいような、水族館に行きたいだけのような、チューインガムみたいな切なさのために、わたし、死ぬ必要なんてないよ。口を隠して、鼻を隠して、世界から私を見えなくすればいいだけの、簡単な自殺をしよう。
  
(「マスクの詩」最果タヒ)
   
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"ぼくに生きてほしいと思ってくれるひとが
いなくなった夜に 台所で
冷蔵庫を開けて 牛乳をありったけ飲んだ
ぼくに生きてほしいと思ってくれるひとがいない世界で
今も母親の牛が 子どもにお乳を飲ませている
みんなを愛する博愛なんて信じないけれど
だれかがだれかに贈った愛を おろかに信じてしまうのは
ぼくにも母がいたからだろうか

(「森永のおいしい牛乳の詩」最果タヒ)
   
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